バレエは身体の芸術です。芸術表現のためのダンサーの身体。
繊細なその身体をいつも万全にしておくためには、常日頃のチェックとケアが必要です。
使いすぎによる怪我に最もいい施療は休むことですが、舞台があり、リハーサルがあると、そうも言っていられないのがダンサーです。
バレエダンサーの足のトラブルで多いのは、捻挫です。
捻挫とは、関節に無理にねじったような外力がかかり、関節の周囲が腫れて、痛くなる状態です。
関節包、腱、靱帯の損傷があり、関節に力が加わると痛むが、関節がグラグラすることはありません。靱帯が断裂していると、足首がグラグラします。
肉離れは、筋肉の収縮調節が突然困難になって、自らの力で自らの筋肉を引きちぎってしまいます。筋肉や筋膜の断裂が起こり、血腫ができます。太もも、ふくらはぎ、背中等に起こります。
傷を受けてから最初の2~3日は、「炎症」が起こりますが、これは傷が細菌などに感染するのを防ぐために起こる、防御反応です。そして血管の新生が行われ、傷の修復役である繊維が細胞などに集まって、修復されます。修復された跡が固まっていますので、この塊を取らないと、足首が固まって柔軟性を失い、捻挫を繰り返します。
肉離れを起こした後も同様に固まっていますので、開脚が出来にくくなったりします。
皮膚 | 1週間 |
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筋肉(軽い) | 2~3週間 |
筋肉(重い) | 2ヶ月 |
腱 | 2ヶ月 |
靱帯(軽い) | 2ヶ月 |
靱帯(重い) | 6ヶ月 |
骨 | 2~6ヶ月 |
神経 | 6ヶ月 |
(参考文献:スポーツ指導者のためのスポーツ外傷より)
筋肉は、縮む性質しかなく、自発的に伸びるということはありません。
一度収縮した筋肉は、自力で元に元の長さまで戻ることはできません。短縮した筋肉を元の長さにまで引き伸ばしているのは、反対側にある筋肉の作用か、重力の作用によります。
ダンサーが速い動きをしている時でも、筋肉は縮むことだけに集中して、反対側の筋肉も、自発的には縮むだけの働きです。この動きを繰り返していると筋肉疲労が起こり、筋の伸びる率は小さくなってきます。これに重力が加わると、骨と骨の間は詰まった状態になります。特に、脊柱は骨と骨の間にクッション(椎間板)があります。このクッションが関節の詰まりにより圧迫され、椎間板がいたみます。
この、筋肉の収縮による疲労により、足のアーチが痛くなったり、股関節の動きが悪くなったりします。